ATF が「80% ロウワー」の販売店を強制捜査……いったい何があったのか?


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記事公開: 2014年03月20日 12:16
最終更新: 2014年08月31日 16:21

今月 15 日、アメリカ・カリフォルニア州に所在する AR-15 向け「80% ロウワー」の販売店である Ares Armor 社が、司法省の「アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局」 (略称 ATF または BATFE) による強制捜査を受けました。

下の動画は、見物人の一人によって撮影されたもので、武装した ATF のエージェント達が Ares Armor 社への強制捜査を開始する模様を収めています。

Ares Armor Raid National City, Ca – YouTube

一体何故 ATF は Ares Armor 社を強制捜査したのでしょうか?
その原因は、Ares Armor 社が EP Armory 社 (80% ロウワー専門の製造業者) から仕入れて販売していた、AR-15 向けポリマー製 80% ロウワー「EP80」にありました。
(「80% ロウワー」って何? という方は、こちらの記事を参照して下さい)

ATF は、「容易に火器に転換出来る」という理由で、ポリマー製 80% ロウワーを「銃のパーツ」ではなく「火器」に分類するという決定書を発表しました。
その決定に基づき、今月 7 日には、カリフォルニア州ベーカーズフィールドに立地する EP Armory 社の店舗と、経営者である Chris Cook 氏の自宅に対する ATF の強制捜査が執行されました。
Chris Cook 氏は、「ポリマー製 80% ロウワーの製造過程は ATF の訓令に従ったもので、100% 合法である」と主張しています。

EP Armory 社に対する強制捜査の後、ATF は、EP Armory 社の製品を販売していた Ares Armor 社に対して通告を行いました。

Ares Armor 社の CEO である Dimitrios Karras 氏 (元・米海兵隊員) は、発表した声明の中で次のように述べています。
「『Ares Armor 社が、(1) EP Armory 社製の 80% ロウワーを全て引き渡し、(2) Ares Armor 社の顧客の個人情報を ATF に提出 しなければ、強制捜査の令状を申請する』と忠告されました。」
「『顧客の個人情報を提出すれば、Ares Armor 社に対する強制捜査は行わず、刑事的な罪を追及することもない』と ATF は言いました。あれはまるで “ゆすり” のようでしたよ。」
「ATF は、EP Armory 社の 80% ロウワーを、誤った情報に基づいて不適当に火器として分類しています。EP Armory 社の製品は、私が過去に販売してきた製品と何一つ変わりません。」

ATF は、EP Armory 社の 80% ロウワーと、それを購入した 5,000 名の名前が記載された購入者リストを要求したのです。
ATF が Ares Armor 社に対する強制捜査を行おうとしていたことは、Karras 氏の弁護士を通じて、今月 10 日に彼に伝えられたといいます。
強制捜査の計画を知った Karras 氏は、会社と従業員、そして何より顧客の個人情報を守るために、ATF の強制捜査に対する「一時的差止命令」 (Temporary Restraining Order, TRO) を連邦地方裁判官に申請し、今月 11 日に受理されました。

Karras 氏は、Ares Armor 社のウェブサイトにて次のように語りました。
「ATF は過去にも Ares Armor 社の顧客リストを要求してきましたが、今回は、間違った情報に基づく過度な脅しをもって、リストを強奪しようとしています。お客様のプライバシーは、私たちにとって最も大切なものです。私は、倫理的な良心に従って、顧客リストを ATF に引き渡すことは致しません。」

Ares Armor 社の TRO 申請に関して、連邦地方検事 Laura Duffy 氏は 14 日、次のようにコメントしました。
「Ares Armor 社が ATF の捜査対象になっているのは、シリアルナンバーが表示されていない、およそ 6,000 個もの AR-15 のロウワーレシーバーを所有しているためです。更に、Ares Armor 社は連邦火器ライセンス (FFL) を保有していません。ですから、Ares Armor 社は法律上、火器を売買する業務に携わることは出来ないのです。ましてや製造者名やシリアルナンバーの表示がない火器ともなれば、言うまでもありません。」

 

Ares Armor 社の TRO 申請が受理されたのにも関わらず、一体何故 ATF は強制捜査を執行することが出来たのでしょうか?

実は、ATF は 14 日の午後に、連邦地方裁判官 Janis Lynn Sammartino 氏から「一方的転願命令」 (ex parte application order) を受領していたのでした。
この転願命令は Ares Armor 社が申請した TRO を破棄し、Ares Armor 社が在庫として所有する EP Armory 社製 80% ロウワーの「破壊、譲渡、販売、または放棄」を禁じるものでした。
つまり、ATF は命令をもって命令を制し、力ずくで強制捜査を行ったということになります。

令状は、カリフォルニア州ナショナルシティとオーシャンサイドの 2 つの拠点に対して執行されました。
下の動画には、レイドジャケットに身を包み武装した ATF のエージェント達が店舗を捜索したり、スレッジハンマーで金庫を破壊したり、プラスチックケースに入れられた物品を押収する光景が収められています。

ATF cracking Ares Armor safe – YouTube

ある銃器製造業者は、Guns.com に対して匿名を条件に次のように語りました。
「ATF は、容易に『火器』に転換出来るという理由で、ポリマー製 80% ロウワーを法律上の『火器』と見なし始めたようです。ですから、ATF から見れば、Ares Armor 社や EP Armory 社は、購入者に対して身元確認を行わずに『火器』を譲渡していたことになります。」

Karras 氏は、強制捜査の後、Ares Armor 社の Facebook ページにて次のようなコメントを発表しました。
「本日、ATF が Ares Armor 社の全ての建物に対して強制捜査を行いました。従業員は一人も拘留・逮捕されませんでした。明日 (16 日) には営業を再開し、月曜日 (17 日) には注文を受けた商品を発送致します。」
「彼ら (ATF) の行動は間違っていると、我々は心から信じている。法廷では徹底的に救済を追求する所存だ。これは単なる始まりに過ぎない!」

21 日現在も尚、Ares Armor 社のサイトには 80% ロウワーが商品として掲載されていますが、EP Armory 社のポリマー製 80% ロウワーは見当たりません。
Ares Armor 社と ATF の両者は、予備的差止命令に関する審問のため、20 日に法廷で対面する、と伝えられています。

 

80% ロウワーとは関係のない話ですが、実は Ares Armor 社が論争の火種となったのは、今回が初めてではありませんでした。

AR-15 のシルエットに、”Unserialized. No Registration. Legal.” (シリアル無し。登録不要。合法。) という売り文句が書かれた Ares Armor 社の看板広告。
この広告は市の適切な認可を得ていないものだとして、ナショナルシティ市が撤去を求めるという問題が起きたばかりでした。

 

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