Magpul MBUS の前身となったバックアップアイアンサイト「MBUS 2.5」

Magpul MBUS の前身となったバックアップアイアンサイト「MBUS 2.5」

Magpul 社のポリマー製バックアップアイアンサイト (BUIS)、「MBUS」 (Magpul Back-Up Sight)。
この「MBUS」は元々、KRISS Vector の為に開発されたものだったということをご存知でしょうか?

 

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軍隊・法執行機関向け (ショートバレル、セレクティブファイア) モデルの KRISS Vector SMG。
Pic from: Vector SMG .45 ACP – KRISS Arms

KRISS Vector は、アメリカの KRISS USA 社が開発した .45 口径のサブマシンガンで、反動を抑制するために銃口がグリップの前に配置されたデザインが特徴的です。
Magpul 社は、Vector のプロトタイプから製品版に至るまで、そのデザイン開発に大きく関わってきました。
開発に協力する中で、Magpul 社が Vector の為に開発したアイアンサイトが、現在の MBUS の前身となる「MBUS 2.5」だったのです。
前身なのに何故「2.5」? と思われるでしょうが、底面にそう刻印されていることから、「MBUS 2.5」と呼ばれています。

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フロントサイトの底面に刻印された「MBUS 2.5」の文字。ポップアップするためのスプリングも確認出来る。
Pic from: Magpul MBUS 2.5, the predecessor to the MBUS | The Firearm Blog
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リアサイトはオープンサイトとピープサイトを兼ね備えている。ホワイトは入っていない。
Pic from: How about a Kriss Vector thread? – AR15.Com Archive
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後身である Magpul MBUS との比較。上の写真とこの写真に写っている MBUS 2.5 のリアサイトには Magpul のロゴマークが刻印されていない。
Pic from: How about a Kriss Vector thread? – AR15.Com Archive
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Magpul のロゴマークが刻印されている MBUS 2.5 のリアサイト。
Pic from: Magpul MBUS 2.5 – AR15.Com Archive
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MBUS 2.5 が装備された KRISS Vector SBR の初期生産モデル。
Pic from: Magpul MBUS 2.5 – AR15.Com Archive

「MBUS 2.5」は、現在の MBUS とは見た目も機能も大きく異なります。
まず、MBUS 2.5 の本体は削り出しのアルミ製です。内蔵されたスプリングの力でポップアップさせるには、横のボタンを押し込みます。
最大の特徴は、H&K MP7 のアイアンサイトのように、折り畳んだ状態ではピストルサイト (オープンサイト) として、展開させるとライフルサイト (ピープサイト) として使うことが出来るという点です。
MBUS 2.5 は、2008 年頃に販売された Vector の初期生産モデルに標準装備されていたようです。

 

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ショットショー 2007 で公開された、Vector の初期プロトタイプ。H&K MP7 のアイアンサイトがそのまま装備されている。また、当時は KRISS USA 社ではなく、TDI 社の名で Vector の開発が進められていた。
Pic from: KRISS BUIS: Magpul and MWI origins
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H&K MP7 のアイアンサイト (これはエアソフトガン用なので参考程度に)。素早く狙いを定められるオープンサイトと、精密に狙いを定められるピープサイトを切り替えられる「デュアル・サイティング・システム」を採用したこのアイアンサイトは、PDW として開発された MP7 には最適である。
Pic from: TSD MP7 Front and Rear Sight Set – Airsoft Atlanta

2007 年のショットショーで公開された Vector の初期プロトタイプには、H&K MP7 のアイアンサイトがなんとそのまま装備されていました。
どうやら TDI / KRISS USA 社は、MP7 のようなデュアル・サイティング可能なアイアンサイトを Vector に装備したかったようです。しかし、MP7 のサイトをそのまま使って売るわけにはいかないというわけで、それに似たサイトを Magpul 社に作らせた、ということでしょう。

 

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Midwest Industries (MI) 社が Vector 向けに製造した BUIS (左) と Magpul MBUS 2.5 (右)。MI 社のリアサイトはオープンサイトを備えていない代わりに、ピープサイトの大きさを大小切り替えることが出来る。
Pic from: How about a Kriss Vector thread? – AR15.Com Archive
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Magpul MBUS 2.5 (左) と MI 社の BUIS (右)。フロント/リア共に、MBUS 2.5 の方がロープロファイルになっている。
Pic from: How about a Kriss Vector thread? – AR15.Com Archive

しかし KRISS USA 社は後に、Midwest Industries (MI) 社の BUIS を Vector に採用しました。その理由は、Magpul の MBUS 2.5 があまりにも高価だった (MI 社製 BUIS の方が安価だった) からだそうです。
しかし、MI 社の BUIS もフロント/リアのセットで 280 ドル (KRISS USA 社が販売する価格) と、決して安いものではありません。MBUS 2.5 の価格がそれよりも高いのならば、その価格は考えるだけでも恐ろしいですね。
MI 社の BUIS は、MP7 のアイアンサイトや MBUS 2.5 のようなオープンサイトを備えていません。現在も Vector には、この MI 社製 BUIS が標準装備されているようですが、いくらなんでも 280 ドルは高すぎるのではないでしょうか……。

 

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16 インチバレルの民生用モデルである Vector CRB に、Magpul MBUS と、ストックアダプターを介して Magpul UBR ストックを装備した Vector CRB Enhanced。
Pic from: Vector CRB ENHANCED .45 ACP – KRISS Arms

余談ですが、KRISS USA 社は今年のショットショーにて、Vector シリーズの新たな “Enhanced” ラインを発表しました。
Enhanced ラインの Vector には、Magpul MBUS (2.5 ではありません) と、ストックアダプターを介して Magpul UBR ストックが標準装備されています。
発売は、今年の第 2 四半期前後を予定しているとのことです。

 

References: