受験も終わったので、話題の「ゼロ・ダーク・サーティ」を観てきました。
「ゼロ・ダーク・サーティ」は、アメリカの9/11同時多発テロ事件の首謀者とされるオサマ・ビン・ラディンを10年に渡って追い続けるCIAの苦悩と、2011年5月2日に実行されたビン・ラディン暗殺作戦「海神の槍作戦」 (Operation Neptune Spear) を描いたドキュメンタリー映画です。
今回は、オンライン映画データベース IMDb に寄せられた「ゼロ・ダーク・サーティ」に関するトリビア・ツッコミ・補足説明の中から、個人的に気になったものを集めて訳してみました。
ネタバレを含みますので閲覧の際はご注意を!
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- タイトルの「ゼロ・ダーク・サーティ」(Zero Dark Thirty) は、軍事用語で「0時30分」(午前12時30分) の意味。”Zero Dark” は深夜0時0分のことで、そこから30 (Thirty) 分進んだ時刻、つまり0時30分を意味する。終盤、DEVGRU が作戦を決行するシーンで、マヤが0時30分を示す時計を見るカットがある。
- 本作の監督、脚本、プロデューサーと制作スタッフの多くは、「ハート・ロッカー」(The Hurt Locker) の制作にも携わっている。
- CIAのエージェントがクウェートの酒場で情報提供者に会うシーンがあるが、クウェートにバーやダンスクラブの類は実在しない。そもそもイスラム教徒の多いクウェートでは、アルコールは厳しく規制されている。
- パキスタンで、CIAのエージェントが車で移動中、バイクに乗って武装した男2名に行く手を阻まれるシーンも実際の事件に基づいているが、実際にはCIAエージェントがバイクの男を2人とも殺害している。
- 2009年のチャップマン基地での自爆テロに関して、本作では犯人(ヨルダン人の医師とされるが、その正体はイスラム過激派の二重スパイであった)は初めて基地を訪れたように描かれているが、実際には犯人はテロ前に何度か基地を訪れCIAに重要な情報を提供していたことがあり、信用できると見なされていた為、テロ当日もゲートでのチェックは行われなかったという。
- 強襲作戦の際に DEVGRU 隊員が装着していた四眼のナイトビジョンゴーグルは、L-3 Warrior Systems 製の GPNVG-18 である。従来の二眼NVGに比べて広い視野を確保出来るのが特徴。
- DEVGRU の強襲作戦中、近所の家の明かりが次々と点いていくシーンがあるが、元 DEVGRU 隊員で、当の強襲作戦にも参加したマーク・オーウェン (Mark Owen, 仮名) 氏の手記 “No Easy Day” によれば、近所の電源は強襲の直前にカットされていたという。
- マーク・オーウェン氏の手記で言及されている、強襲作戦に関する重要な事項のうち、いくつかが本作では描かれなかった。
1. 隠れ家に特殊部隊を投入するか、隠れ家ごと爆撃するかという作戦方針を決める議論。
2. ノースカロライナにビン・ラディンの隠れ家を完全再現した施設を建設し、実際の作戦と同じ隊員やヘリを動員しての訓練が繰り返し行われたこと。
3. ブラックホークの墜落(緊急着陸)後、隊員を回収するために前線で待機していた別のブラックホークの存在(実際には第160特殊作戦航空連隊のチヌークが駆け付け回収を行った)。 - 本作では、殺害されたビン・ラディンの髭は灰色であるが、マーク・オーウェン氏の手記によれば彼の髭は黒く染められていたという。
- 騒音を軽減したステルス型ブラックホークを使用したとは言っても、ビン・ラディン達はヘリの音に気づいて警戒しなかったのか?
→ビン・ラディンが潜伏していたパキスタンのアボッターバードには、パキスタン軍士官学校 (PMA) などの軍事施設が多く、頭上を軍の航空機が低空で飛ぶことも決して珍しくない為、襲撃当日も軍の夜間訓練だと考えていた可能性がある。 - CIA支局長(ブラッドレー)の名前はどこから漏れたのか?
→表向きにはパキスタン側(政府・情報局 (ISI)・軍部)とされる。また、上司を飛ばして自分のやり方を貫く為にマヤ自身が漏らしたという見方もできる。 - マヤは実在の人物なのか?
→ビン・ラディンの捜索に携わった、実在する多くのCIAエージェントに基づいた複合キャラクターとされるが、マーク・オーウェン氏の手記では “Jen” という仮名の女性CIAエージェントについて言及し、彼女は本作のマヤのように、ビン・ラディンがアボッターバードに潜伏していると一人だけ断言し、強襲作戦を管理室から見守り、ビン・ラディンの死体をその目で確認し、その後泣き出したという。しかし「ゼロ・ダーク・サーティ」の制作が始まったのはビン・ラディン殺害前で、当然ながらマーク・オーウェン氏の手記が出版される前でもある為、”Jen” は単なるインスピレーションの一つであり、”Jen” = マヤではないとされる。(元々本作はアメリカの10年に及ぶビン・ラディン追跡劇を描いたものになる予定だったが、ビン・ラディン殺害後に本作の脚本は一から書き直された。) - 本作でCIA長官レオン・パネッタ (Leon Panetta, 当時, 現米国防長官) を演じたジェームズ・ギャンドルフィーニ (James Gandolfini) は、公開前にパネッタ本人にこのようなメモを送った。「全てのことについて申し訳なく思っているので、ここに謝罪します。あなたは私の父親のようなものです、(本作について)何か気に障ることもあるでしょう。ですが、その際は是非私に知らせてください」それから数ヶ月間、彼からの連絡は無かったが、授賞式シーズンの最中である1月上旬に、本作の脚本を担当したマーク・ボール (Mark Boal) がギャンドルフィーニにこう話した。「レオン・パネッタが君の電話番号を知りたがってる。どうやって連絡したらいいか分からないようだ」するとギャンドルフィーニは驚いてこう言ったという。「彼はCIAの長官だぞ! なのに分からないって? おいおい、マジかよ!」(意訳)
その他のトリビア・ツッコミ等は以下から。