独自のレート・リダクション・システムにより、フルオートでもマズルコントロールを容易なものにした SOAR で知られるフィリピンの Ferfrans 社が、従来のマズルブレーキの問題点を解決した新たなマズルデバイスを開発しました。
YouTube – FERFRANS CRD Muzzle Device System
Concussion Reduction Device (CRD) と名付けられたこのマズルデバイスは、横に3つのガスポートが空けられたマズルブレーキに脱着可能な「スリーブ」を組み合わせたもので、射撃時の横方向へのコンカッション (concussion) 、つまり発射ガスや発射音などの圧力波を限りなくゼロに近付ける、との事。
従来のマズルブレーキは横方向に発射ガスを逃がしてリコイルを軽減するものが多く、室内での CQB の際、隣にいるチームメイトに悪影響を与えたり、遮蔽物の下からアーバンプローンで射撃する際、砂埃を派手に巻き上げてしまう等の問題が指摘されていました。
スリーブを装着した状態で、.223 Rem を発射。射撃時のコンカッションが視覚的に分かるように配置された左右の紙は、ほとんど揺れていません。
同じくスリーブを装着した状態で、5.56mm NATO を発射。やはり左右の紙はあまり揺れません。
マズルデバイスを変えていないのにマズルフラッシュが大きくなっていますが、これは .223 と 5.56mm では発射時の圧力が異なる為です。
※ .223 と 5.56mm の違いについて、詳しくは以下を参照。
Ask Foghorn: What’s the Difference Between 5.56 and .223? | The Truth About Guns
スリーブを外し、従来のものと同じようなマズルブレーキのみで射撃を行うと、マズルフラッシュとコンカッションが左右に広がり、左右の紙が激しく揺れていることが分かります。
続いてスリーブを外したままアーバンプローンで射撃を行うと、砂埃が舞い上がり、高温・有毒の発射ガスが顔面に吹きかかります。
スリーブを装着すると、砂埃の動きが示すように発射ガスが前方に流れ、安全に射撃を行うことが出来ます。
この CRD 、Noveske のフラッシュサプレッサーによく似ていると思った方もきっと多いことだと思います。
YouTube にアップされたこの動画にも、Noveske のものと同じではないのか、といったコメントがいくつか寄せられていました。
FOG 曰く、CRD のスリーブには (Noveske のものには無い) ベント穴が設けられていて、マズルブレーキとしての役目もしっかり果たす一方、Noveske のフラッシュサプレッサーはリコイルを軽減するどころか増大させる、との事。
そもそも、目的と効果が異なるマズルブレーキとフラッシュサプレッサーを比較するのもどうかと思いますが、Noveske ハイダー使用者のレビュー等を見る限り、実際は銃口が上方へ跳ね上がるというよりも後方 (射手側) へのリコイルが増す感じだそうです (コンカッションを前方へ集中させるので当然ですが) 。
しかし、Noveske ハイダーは他社のハイダーに比べて重い、というのは紛れもない事実です。
一般的に、マズルフラッシュやコンカッションは、バレルレングスが短いほど大きくなります。バレルレングスが短いと火薬がバレル内で燃え尽きず、銃口を出た後も燃え続ける為です。
7.5 インチという、リーガルレングスである 16 インチの半分にも満たない極めて短い Ferfrans SCW のバレルレングスでも、コンカッションを最小限に抑えることが出来るアドバンテージは大きいと思います。
この CRD は、従来のマズルブレーキが抱える問題を解決し、且つマズルブレーキとしての機能を失わず、火力と安定性を両立させる、まさに Ferfrans らしい製品と言えるでしょう。