かつてのライフルは、曲銃床 (曲がっているストックで、多くの場合グリップも兼ねる) 式のものが主流でした。しかし現代のライフルの多くは、反動を制御しやすい直銃床 (一直線に伸びるストック) と、ストックから独立したピストルグリップを備えています。
そんな中、先月 25 ~ 27 日に米・インディアナ州で開催された 2014 年度全米ライフル協会年次総会・展覧会 (NRA Annual Meeting & Exhibits) にて、M16/M4 カービンを軽機関銃にコンバート出来るキット “Shrike 5.56” で知られる Ares Defense Systems 社が、曲銃床式の AR-15 となる “SCR” (Sport Configurable Rifle) を発表し話題となっています。
一般的に曲銃床の利点としては、照準 (アイアンサイト) を覗きやすい、射手への衝撃負担を緩和する、などが挙げられますが、アメリカでは「合法的に所持しやすい」というのが大きなアドバンテージになります。
例えばカリフォルニア州やニューヨーク州では、テレスコピック (伸縮式) ストック、フォールディング (折畳式) ストック、またはピストルグリップを備えたライフルは、規制の対象となっています。
グリップを兼ねた固定式ストックである曲銃床を備えた SCR は、いずれの規制項目にも該当しない「フィーチャーレス・ライフル」 (featureless rifle) として、全米 50 州で合法的に所持できる点が注目されているようです。
また、動画でも紹介されているように、SCR は既存の AR-15 のアッパーレシーバーと互換性があり、SCR のロウワーレシーバーに様々なアッパーレシーバーを載せて使うことが出来ます。
もちろん .223 / 5.56 mm 口径のアッパーのみならず、.300 BLK などのアッパーにも対応しています。
しかし通常 AR-15 には、ガス圧によって後退したボルトキャリアを受け止め押し戻すバッファーとバッファースプリング、及びそれらを収めるバッファーチューブが必要になります。
曲銃床をもつ SCR の場合、どこにどうやってバッファーを配置しているのか気になっていたのですが、調べたところ、下の画像のようなメカニズムになっているようです。
どうやら、専用の特殊なボルトキャリアを使用し、バッファーはストック内に斜めに配置されている模様。一部のセミオートショットガンのメカニズムと似ていますね。ボルト自体は標準のものが使えるそうです。
この特許は 2009 年に出願されたものなのですが、実は、Ares Defense 社は 2009 年のショットショーにて既に曲銃床式 AR-15 のプロトタイプを発表していたのです。
“Herring Modular Sporting Rifle” (MSR) の名で発表されたこの曲銃床式 AR は、SCR の前身と言えますが、結局プロトタイプに終わり生産されることはありませんでした。
MSR の発表から 4 年の間にもアメリカ各州の銃規制はより厳しくなったことで、曲銃床式 AR の需要は、当時よりも高まっていると言えるでしょう。
もちろん MSR の魅力は「合法的に所持しやすい」ということだけではありません。狩猟やベンチレスト射撃の世界では、現代でも伝統的な曲銃床式のライフルが好まれます。拡張性と信頼性が極めて高い AR-15 を、曲銃床で使用したいと考えるハンターやシューター達は少なくないはずです。
Ares Defense SCR の詳細な仕様は以下の通りです。
- 口径 – .223 / 5.56 mm 版と 7.62×39 mm 版が選択可能
- 装弾数 – 5連装のマガジンが付属 (全ての AR-15 / M16 用マガジンが使用可能)
- 重量 – 5.7 ポンド (2.59 kg)
- 全長 – カービンモデル: 37 インチ (94 cm), ライフルモデル: 39 インチ (99 cm)
- 銃身長 – カービンモデル: 16.25 インチ (41.275 cm), ライフルモデル: 18 インチ (45.72 cm)
- ハンドガード – Magpul MOE ハンドガード (カービンレングスとライフルレングスが選択可能)
- 表面仕上 – 軍規格黒色ハードコート・アノダイズ処理
100% アメリカ合衆国製
特許取得済 (追加特許申請中)
References: