Magpul 社のポリマー製バックアップアイアンサイト (BUIS)、「MBUS」 (Magpul Back-Up Sight)。
この「MBUS」は元々、KRISS Vector の為に開発されたものだったということをご存知でしょうか?
KRISS Vector は、アメリカの KRISS USA 社が開発した .45 口径のサブマシンガンで、反動を抑制するために銃口がグリップの前に配置されたデザインが特徴的です。
Magpul 社は、Vector のプロトタイプから製品版に至るまで、そのデザイン開発に大きく関わってきました。
開発に協力する中で、Magpul 社が Vector の為に開発したアイアンサイトが、現在の MBUS の前身となる「MBUS 2.5」だったのです。
前身なのに何故「2.5」? と思われるでしょうが、底面にそう刻印されていることから、「MBUS 2.5」と呼ばれています。
「MBUS 2.5」は、現在の MBUS とは見た目も機能も大きく異なります。
まず、MBUS 2.5 の本体は削り出しのアルミ製です。内蔵されたスプリングの力でポップアップさせるには、横のボタンを押し込みます。
最大の特徴は、H&K MP7 のアイアンサイトのように、折り畳んだ状態ではピストルサイト (オープンサイト) として、展開させるとライフルサイト (ピープサイト) として使うことが出来るという点です。
MBUS 2.5 は、2008 年頃に販売された Vector の初期生産モデルに標準装備されていたようです。
2007 年のショットショーで公開された Vector の初期プロトタイプには、H&K MP7 のアイアンサイトがなんとそのまま装備されていました。
どうやら TDI / KRISS USA 社は、MP7 のようなデュアル・サイティング可能なアイアンサイトを Vector に装備したかったようです。しかし、MP7 のサイトをそのまま使って売るわけにはいかないというわけで、それに似たサイトを Magpul 社に作らせた、ということでしょう。
しかし KRISS USA 社は後に、Midwest Industries (MI) 社の BUIS を Vector に採用しました。その理由は、Magpul の MBUS 2.5 があまりにも高価だった (MI 社製 BUIS の方が安価だった) からだそうです。
しかし、MI 社の BUIS もフロント/リアのセットで 280 ドル (KRISS USA 社が販売する価格) と、決して安いものではありません。MBUS 2.5 の価格がそれよりも高いのならば、その価格は考えるだけでも恐ろしいですね。
MI 社の BUIS は、MP7 のアイアンサイトや MBUS 2.5 のようなオープンサイトを備えていません。現在も Vector には、この MI 社製 BUIS が標準装備されているようですが、いくらなんでも 280 ドルは高すぎるのではないでしょうか……。
余談ですが、KRISS USA 社は今年のショットショーにて、Vector シリーズの新たな “Enhanced” ラインを発表しました。
Enhanced ラインの Vector には、Magpul MBUS (2.5 ではありません) と、ストックアダプターを介して Magpul UBR ストックが標準装備されています。
発売は、今年の第 2 四半期前後を予定しているとのことです。
References:
- Magpul MBUS 2.5, the predecessor to the MBUS | The Firearm Blog
- KRISS Vector Enhanced Line With Magpul Accessories | The Firearm Blog
- KRISS BUIS: Magpul and MWI origins
- How about a Kriss Vector thread? – AR15.Com Archive
- Magpul MBUS 2.5 – AR15.Com Archive
- KRISS Vector – Wikipedia, the free encyclopedia
- Magpul Industries – Wikipedia, the free encyclopedia