Colt Defense 社は、アメリカ陸軍の M4 カービン向けヘヴィーバレルと、それに対応したフロントサイトのアセンブリーを 35 万個供給する契約を獲得しました。
契約額は 54,491,305 ドルで、配備中の M4 カービンを M4A1 カービンに更新することを目指す、米陸軍の M4 Carbine Product Improvement Program (M4 PIP) のフェーズ 1 にとって重要な契約となります。
昨年 2 月には、FN Herstal USA 社が Colt Defense 社と Remington Arms 社を抑え、米陸軍向け M4 / M4A1 カービンの製造権を 7,700 万ドルで獲得しました。
苦渋を味わったコルト社にとって、今回の契約獲得は大変喜ばしいことでしょう。
米陸軍は、将来の主力カービン計画として、次期主力カービンを選定しつつ (Individual Carbine Competition, ICC)、既存の M4 カービンを改良する、「二重経路戦略」 (Dual Path Strategy) を打ち立てました。
しかし昨年、予算問題により次期主力カービン選定計画 ICC が中止となったため、米陸軍は M4 カービンの改良に集中して力を注ぐこととなったのです。
その M4 カービン改良計画が、先述の M4 Carbine Product Improvement Program (M4 PIP) です。
先述の通り、M4 PIP のフェーズ 1 では、配備中の M4 カービンを M4A1 カービンに更新することを目指しています。そのために必要なコンポーネントとして、「フルオート射撃可能なトリガーグループ」「左右両側から操作可能なアンビデクストラス・セレクター」そして「ヘヴィーバレル」が挙げられています。
今回コルト社が製造することになったヘヴィーバレルは、この M4 PIP のフェーズ 1 達成に必要なコンポーネントの一つです。
また、米陸軍が 2 つの中小企業に対してアンビ・セレクターの製造を発注したことも、先日お伝えしました。
M4 PIP のフェーズ 2 では、改良されたボルトキャリアグループ (BCG)と、フリーフローティング化されたピカティニーレイル・ハンドガードを M4 / M4A1 カービンに試験的に採用することを計画しています。
しかし新型 BCG に関しては、トライアルに参加したどの候補も、既存の BCG の性能を超えることが出来なかったため、計画中止となりました。一方、新型ハンドガードについては現在も試験が続いていて、選定結果が出れば、今年下旬には発表されると見られています。
M4 PIP のフェーズ 1 と予定された改良計画は、2018 年までに完了すると、米陸軍は見ています。
ヘヴィーバレルは、従来の M4 カービンのバレルと比べると、ハンドガードに覆われる部分が、より太くなっています。体積と表面積が大きくなっているため、放熱効率と剛性が向上され、熱膨張による命中精度の低下を防ぐと共に、バレルの寿命を延ばすことに成功しています。
左右側面に入ったカットが特徴的なこのヘヴィーバレルは、2001 年以降に製造された M4A1 カービンの多く (コルト社モデルナンバー: RO921HB) には既に標準装備されています。
現在米陸軍は、新型弾薬である M855 EPR (Enhanced Performance Round) のフィールドテストを実施しています。
M855 EPR 弾は火薬量が多く、通常の 5.56 mm NATO 弾の保証耐圧力の間際までロードされているそうです。その性能は、既存の M855 弾を上回っていることがフィールドテストからも証明されていますが、銃にはより大きな負担が掛かることは明らかです。
ヘヴィーバレルは、外側からのストレスだけでなく、内側からのストレスにも耐えうることから、新型弾薬の採用を計画している米陸軍にとっては、バレルの性能は特に重要だと言えるでしょう。
先日お伝えしたアンビ・セレクターと同様に、ヘヴィーバレルはそれ単体では支給されず、M4 PIP のフェーズ 1 に基づき、他のコンポーネントとセットになって支給される予定です。
Reference:
Colt lands $54.5 million Army contract for M4 PIP upgrade program – Guns.com