Colt Defense 社は、アメリカ陸軍の M4 カービン向けヘヴィーバレルと、それに対応したフロントサイトのアセンブリーを 35 万個供給する契約を獲得しました。
契約額は 54,491,305 ドルで、配備中の M4 カービンを M4A1 カービンに更新することを目指す、米陸軍の M4 Carbine Product Improvement Program (M4 PIP) のフェーズ 1 にとって重要な契約となります。
昨年 2 月には、FN Herstal USA 社が Colt Defense 社と Remington Arms 社を抑え、米陸軍向け M4 / M4A1 カービンの製造権を 7,700 万ドルで獲得しました。
苦渋を味わったコルト社にとって、今回の契約獲得は大変喜ばしいことでしょう。
![Pic from: Army Charging Ahead With M4 PIP - Soldier Systems Daily](https://jisakujien.org/wp-content/uploads/2014/03/Dual-Path-Strategy.jpg)
米陸軍は、将来の主力カービン計画として、次期主力カービンを選定しつつ (Individual Carbine Competition, ICC)、既存の M4 カービンを改良する、「二重経路戦略」 (Dual Path Strategy) を打ち立てました。
しかし昨年、予算問題により次期主力カービン選定計画 ICC が中止となったため、米陸軍は M4 カービンの改良に集中して力を注ぐこととなったのです。
その M4 カービン改良計画が、先述の M4 Carbine Product Improvement Program (M4 PIP) です。
先述の通り、M4 PIP のフェーズ 1 では、配備中の M4 カービンを M4A1 カービンに更新することを目指しています。そのために必要なコンポーネントとして、「フルオート射撃可能なトリガーグループ」「左右両側から操作可能なアンビデクストラス・セレクター」そして「ヘヴィーバレル」が挙げられています。
今回コルト社が製造することになったヘヴィーバレルは、この M4 PIP のフェーズ 1 達成に必要なコンポーネントの一つです。
また、米陸軍が 2 つの中小企業に対してアンビ・セレクターの製造を発注したことも、先日お伝えしました。
M4 PIP のフェーズ 2 では、改良されたボルトキャリアグループ (BCG)と、フリーフローティング化されたピカティニーレイル・ハンドガードを M4 / M4A1 カービンに試験的に採用することを計画しています。
しかし新型 BCG に関しては、トライアルに参加したどの候補も、既存の BCG の性能を超えることが出来なかったため、計画中止となりました。一方、新型ハンドガードについては現在も試験が続いていて、選定結果が出れば、今年下旬には発表されると見られています。
M4 PIP のフェーズ 1 と予定された改良計画は、2018 年までに完了すると、米陸軍は見ています。
![Pic from: Colt lands $54.5 million Army contract for M4 PIP upgrade program - Guns.com](https://jisakujien.org/wp-content/uploads/2014/03/m4-m4a1-barrel-profiles.jpg)
下: 従来の M4 カービンのバレル (通称: ガヴァメント・プロファイル・バレル、M4 プロファイル・バレル)
Pic from: Colt lands $54.5 million Army contract for M4 PIP upgrade program – Guns.com
ヘヴィーバレルは、従来の M4 カービンのバレルと比べると、ハンドガードに覆われる部分が、より太くなっています。体積と表面積が大きくなっているため、放熱効率と剛性が向上され、熱膨張による命中精度の低下を防ぐと共に、バレルの寿命を延ばすことに成功しています。
左右側面に入ったカットが特徴的なこのヘヴィーバレルは、2001 年以降に製造された M4A1 カービンの多く (コルト社モデルナンバー: RO921HB) には既に標準装備されています。
現在米陸軍は、新型弾薬である M855 EPR (Enhanced Performance Round) のフィールドテストを実施しています。
M855 EPR 弾は火薬量が多く、通常の 5.56 mm NATO 弾の保証耐圧力の間際までロードされているそうです。その性能は、既存の M855 弾を上回っていることがフィールドテストからも証明されていますが、銃にはより大きな負担が掛かることは明らかです。
ヘヴィーバレルは、外側からのストレスだけでなく、内側からのストレスにも耐えうることから、新型弾薬の採用を計画している米陸軍にとっては、バレルの性能は特に重要だと言えるでしょう。
先日お伝えしたアンビ・セレクターと同様に、ヘヴィーバレルはそれ単体では支給されず、M4 PIP のフェーズ 1 に基づき、他のコンポーネントとセットになって支給される予定です。
Reference:
Colt lands $54.5 million Army contract for M4 PIP upgrade program – Guns.com