M4カービンのエアソフトガンをお持ちの方は、アッパーレシーバーの右側面を確認してみてください。上の写真のような刻印がありませんか? もしかすると、写真とは異なる文字・図形が刻印されているかもしれません。そしてこう思ったことはありませんか? 「この刻印は一体何を意味するんだろう」と……。
目次
M4カービンのレシーバーの製造元は実はバラバラ
軍用のM4カービンや、多くの民間向けAR-15のレシーバーは、アルミ合金を鍛造(フォージング)することで作られています。
ARFCOMにおける伝説の刻印スレを立てた偉大なるブラックライフル研究家である_DR氏は、レシーバーの生産事情に関して次のように語っています。
コルト社は自らのアルミ鍛造設備を持っていません。AR-15系ライフルの製造業者は誰も持っていません。コルト社はアッパーレシーバーを鍛造するために様々な下請業者と契約しています。(中略)鍛造して出来たものに対して、コルト社が品質管理を行いコルト社のノウハウを注ぎ込むことで、基準に適合しているかどうか、コルト社製ライフルに組み込まれる前にチェックされるのです。 ((Colt 6920 markings…2 new guns with different UPPER markings – AR15.Com Archive))
つまり、一見同じ「コルトのM4カービン」に見えても、レシーバーの製造元が異なる場合があるということです。
政府との契約の下にM4カービンの大量生産を行うコルト社は複数の下請業者と契約している一方、主に民間向けのAR-15を生産するメーカー各社は、それぞれ単独契約を結んでいる場合が多いようです ((要出典。))。
フォージマークとは
そのレシーバーがどこで製造されたものなのか、それを示すのが「フォージマーク」(forge mark) ((Christopher R. Bartocci氏の書籍『Black Rifle II』では「フォージングコード」(forging code)と呼ばれています。))です。鍛造を下請けする企業は、それぞれ固有のフォージマークを持っています。AR-15 / M4カービンのフラットトップアッパーレシーバーでは通常、ケースディフレクターの後ろ辺りに表示されています。
下請企業のフォージマークと並んで、鍛造されたレシーバーの仕上げを行った企業のマーキングが入ることもあります。代表的な例がコルト社とディマコ社(現コルトカナダ社)です。コルト社の場合は「C」の文字が、ディマコ社の場合はロゴから取った「D」の文字が表示されます。
フォージマークのリスト
多くのフォージマークは社名を1~2文字で表したものやロゴなどの図形になっていて、初見で製造元を判別することは困難を極めます。そのため、「このフォージマークはどこの企業のものなのか?」と疑問を呈する人々は多く、ARFCOMではフォージマークのリストが有名なコピペとして出回っています。以下はその内容です ((内容を一部修正・補足しています。))。
A (途切れている) = Anchor Harvey Aluminum
AF = Alcoa Forge
C AF = Colt / Alcoa Forge
C MB = Colt / Mueller Brass
カーディナル (意匠化された) = Cardinal Forge ((正確にはノーザン・カーディナルことショウジョウコウカンチョウの頭を模した図形です。(写真)))
CH = Colt / Harvey Aluminum
CK = Colt / Kaiser Aluminum
円に十字と「AR」 = ArmaLite
CM = Colt / Martin Marietta
D (意匠化された) = Diemaco
DK = Diemaco / Kaiser Aluminum
E = EMCO
EK = EMCO / Kaiser Aluminum
E MB = EMCO / Mueller Brass
Fと鍵穴 = FNMI / Cerro Forge ((FNMIは「FN Manufacturing, Inc.」の略で、いわゆるFN社の生産部門のことです。))
FA = FNMI / Anchor Harvey
FK = FNMI / Kaiser Aluminum
FM = FNMI / Martin Marietta
FMB = FNMI / Mueller Brass
鍵穴 = Cerro Forge ((日本人には「前方後円墳の形」と言った方が伝わりやすい気がします。))
L = Lewis Machine & Tool
LK = LAR / Kaiser Aluminum
LM = LAR / Martin Marietta
M (菱型の下に) = Mueller Industries
PA = Capco / Anchor Harvey
PM = Capco / Martin Marietta
正方形 = BAFE (Brass Aluminum Forging Enterprises)
このコピペがいつ、どこから広まったのか、そして何を情報の出典とするのかは不明ですが、このコピペは長年に渡って多くのARFCOMユーザー達の疑問を解決してきました ((このスレを見ると、遅くとも2007年4月には存在していたようです。))。内容に修正が加えられたことも無いようなので、ある程度の信頼性は保証されていると思います。
M4カービンに見られるフォージマーク
以下に掲載するのは、全てコルト社製ライフルのアッパーレシーバーの写真です ((Who made this upper? – AR15.Com Archive))。コルト社が様々な下請業者と契約していることが分かります。
あなたのM4カービンはどうでしたか? ちなみに僕のWAM4は「C AF」でした。
民間ARに見られるフォージマーク
こちらもARFCOMでコピペとして出回っているものです。情報の出典はやはり不明である上、上記のリストよりも見掛ける機会が少なく、内容も矛盾していたりと不確かです。しかし何かの参考になりそうなので、念のため引用しておきます ((内容を一部修正・補足しています。))。
DSA – Cardinal Forge
Rock River Arms – Cardinal Forge
Delton – Cerro Forge, BAFE
DPMS – Cerro Forge
Spikes Tactical – Cerro Forge
Stag Arms – Cardinal Forge, Cerro Forge ((Stag Arms社の項目が重複している上に内容が食い違っています。))
LWRC – Anchor Harvey
Para USA – ZM ((Para USA社はZ-M Weapons社からLR-300の生産権を買い取り、「Tactical Target Rifle」として生産を続けていました(現在は生産終了)。Z-M Weapons社が自社で鍛造を行っていたという話は聞いたことがないので、これは「フォージマーク」ではないと思います。))
Knight’s Armament – Cerro Forge
Wilson Combat – Anchor Harvey
Double Star – Cerro Forge
Smith & Wesson – Cerro Forge
Daniel Defense – Cerro Forge
Sabre Defence – Cerro Forge?
Remington – Cerro Forge
BCM – Cerro Forge, BAFE
Bushmaster – Cerro Forge
Stag Arms – Anchor Harvey, Cardinal Forge ((Stag Arms社の項目が重複している上に内容が食い違っています。))
J&T Distributing (Doublestar) – Cerro Forge, C ((この「C」はコルト社のことでしょうか? 不安です。))
CMMG – Cerro Forge
Colt M4 – Cerro Forge, BAFE, Cardinal Forge, Alcoa Forge ((民間ARではありませんが、便宜上こちらに掲載しておきます。))
製造元によって形状が異なる?
詳細は不明ですが、下請業者によってアッパーレシーバーの形状が一部異なることもあるようです(イジェクションポート右上に注目)。今後はフォージマークとレシーバーの形状をよく見てみたいと思います。