今週日曜日、アメリカ空軍横田基地で開催された日米友好祭に行ってきました。昨年は米連邦政府の歳出削減により無期限延期が発表されましたが ((アメリカ空軍横田基地、8月の友好祭を中止 無期限延期に | FlyTeam ニュース))、今年は無事開催されてよかったですね。僕にとっては2011年に行って以来、3年ぶりの横田になりました。
さて、横田基地友好祭の目玉と言えばやっぱり航空機展示ですが(今年は米海兵隊のMV-22オスプレイも来ていたので尚更ですね)、僕の目的は、基地を警備する空軍警備隊(SF; Security Forces)隊員の持つM4カービンを観察することでした。
今回、M4カービンを手にオスプレイの警備にあたっていた3名のSF隊員に取材して、それぞれのM4カービンを分析してみました。取材にご協力頂いた隊員の方々に深く感謝を申し上げます。
空軍警備隊のM4カービン
個体①
セットアップは以下の通り。
- Knight’s Armament, M4 RAS – レイル・アダプター・システム (P/N: 98064) w/ M4/M5 RAS スクリューリテイナー (P/N: 24859)
- Insight Technology, AN/PEQ-15 ATPIAL レーザーイルミネーター/デジグネーター (P/N: ATP-000-A18)
- Insight Technology, M3X ウェポンライト – スライドロック式、長銃用、1913レイル対応 (P/N: M3X-000-A1)
- Insight Technology, デュアルボタンリモート (P/N: RMT-400-A7)
- Aimpoint, CompM2 ダットサイト (M68 Close Combat Optic)
- Aimpoint, QRP (Quick Release Picatinny) マウント (P/N: 11884) w/ スペーサー (P/N: 12227)
- MaTech, ミルスペック BUIS (Back-Up Iron Sight) OGU83
- 第4世代伸縮式ストック
- A2グリップ
- A2フラッシュハイダー
トリガーグループはS-1-3の「M4カービン」(コルトRO920)です。
アッパーレシーバーのフォージマークは、ディマコ / アンカー・ハーヴィー社製であることを示しています(フォージマークについてはこちらの記事を参照してください)。
個体②
TangoDown社のヴァーティカルフォアグリップが追加されていることと、CompM2のラバーストラップが残っていることを除いて、セットアップは個体①と同じです。Insight Technology社(ITI)のデュアルボタンリモートは、写真には写っていない側に装着されているはずです。
アッパーレシーバーのフォージマークは、アンカー・ハーヴィー / コルト社製であることを示しています。
個体③
Knight’s Armament社(KAC)のヴァーティカルフォアグリップ(P/N: 97098)が追加されていることと、ダットサイトがAimpoint社のCompM4に変わっていることを除いて、セットアップは個体①と同じです。CompM4のマウントはAimpoint社のQRP2(P/N: 12195)で、同社のスタンダードスペーサー(P/N: 12192)を介してマウントされています。
また、通常はロウワーレシーバー右側面に見られる個体識別・管理用のIUID(Item Unique Identification)ラベルも貼られていません(反対側に貼られている可能性あり)。
アッパーレシーバーのフォージマークは、ディマコ / アンカー・ハーヴィー社製であることを示しています。
考察
3年前に見たSF隊員のM4カービンよりもアクセサリーが増えています。当時のM4カービンに付いていたのはMaTech社のBUISとCompM2のみで、RASには4面全てにKACのレイルカバーが装着されていました。
今年見た3つの個体に共通して追加されているのは、ITIのレーザーデジグネーターとウェポンライトです。3年前と比べて、より実戦を意識したセットアップになっていると思います。KACのフォワードグリップとTangoDownのフォワードグリップが両方見られたことも興味深いです ((これらのフォワードグリップは特殊部隊向けのSOPMODパッケージにも含まれています。))。
IUIDラベルに関して、1つだけ(少なくともロウワーレシーバー右側面には)貼られていなかったことも気になりますが、それ以上に円形のIUIDがM4カービンに貼られていたことに驚きました。ミリフォト等でよく目にするM4カービンのIUIDは正方形または長方形ですが、米海兵隊のM27 IARに貼られているIUIDが円形であるように ((The HK M27 IAR aka the HK416. A review and pics – AR15.COM))、空軍では円形のIUIDを使用しているのでしょうか?
3本のうち2本が、コルト社ではなくディマコ社刻印のアッパーレシーバーでした。C7ライフル / C8カービン用として製造されたフラットトップアッパーがビルド段階で(意図的に?)紛れ込んだものと考えられますが、詳細は不明です。
MaTech社のBUISは多くのM4カービンに見られる定番の官給品ですが、2010年の時点でMaTech社はBUISの生産を終了していて、代わりにRock River Arms社が政府との契約の下に生産を続けている、そしてMaTech社曰くBUISの補修部品はLWRC社が生産しているという話があります ((Who makes Matech BUIS – AR15.COM))。
余談
現代ではアメリカを代表するサービスライフルとなったAR-15 / M4カービンですが、米軍で最初にAR-15を配備した部隊をご存知でしょうか?
答えは、この空軍警備隊です。正確には、現在の空軍警備隊の前身であった部隊で、当時は「空軍警察」(AP; Air Police)と呼ばれていました ((United States Air Force Security Forces – Wikipedia, the free encyclopedia))。
空軍警察がAR-15を配備したのは既存のM2カービンを更新するためで、1962年8月にコルト社に対して8,500挺が発注されています ((M16 Rifle History – GlobalSecurity.org))。陸軍・海兵隊向けモデルが「XM16E1」、空軍向けモデルが「M16」としてコルト社に対し正式に発注されたのは、1963年11月4日のことでした ((R. Blake Stevens & Edward C. Ezell. (1987). The Black Rifle: M16 Retrospective. Collector Grade Publications, Canada. p. 134))。
米軍で最初にAR-15を配備した部隊が、現代においてこうしてM4カービンを配備している姿を見ると、何か感慨深いものがあります。